最後の七不思議
那須 晃毅さん 23歳 (関西大文学部4年)
■2月の書き出し
講堂に集められた理由を知っている者はいなかった。いったい何が始まるというのか。壇上に現れたるは眼光鋭い『ベートーヴェンの肖像画』。
「昨今、質の悪い怪談の急増により、我ら学校の怪談の尊厳が失われつつある。よって私はこの状況を打破すべく『真の学校七不思議』の選抜を提案する。さて、問題は選抜の方法だが何か妙案は無いものか」
集められた学校にまつわる妖怪達は、この急な提案に頷きあるいは首傾げ、議論の嵐が巻き起こる。
騒然とする講堂に、ピシャリと響く1つの提案。声の主は半分全裸(?)半分むき出し、『人体模型』。
「それならば全員で戦い最後まで残った7名が『真の学校七不思議』になればいいんじゃないか?」
これには多くが頷いた。
「おお、それはよい」「その話乗った」「アタシも」
しかしこれも異論噴出。偉人なのに怪談扱い、薪を背負って読書読書の『二宮金次郎像』が言う。
「馬鹿を言え。戦いが得手な者ばかりでないぞ。深夜に増える『十三段目の階段』の心情を慮れ。なあ?」
流石は金次郎くん、なかなか思いやりがある。余談ではあるが君は金次郎本人の霊なのか? ただ銅像に取り憑いた無関係な霊なのか? どっちなんだ。
「黙ってろ! 隠れておいて最後の決定間際に階段を突然増やし、転ばして勝ち残る計画が台無しだろ!」
急に話を振られて口が滑った十三階段。なんたる卑怯、だが詰めが甘い。これを聞き激昂する金次郎。
「気を使ってやったのに、お前はそんなことを考えていたのか。なんたる卑怯、なんたる不義理」
ああ、なんて心の小さな金次郎。もしこれが本当に二宮尊徳の御霊なら、さぞ幸田露伴も悲しかろう。
だが十三階段も負けじと言い返す。
「俺は昔からお前のそういう所が大嫌いだったんだ。お前なんて前方不注意で車に轢かれちまえ」
ここまで言われて黙っておけるか、と金次郎は殴り掛かった。流石は銅製、パンチが重そうだ。
このケンカ、誰もが始めは静観していたが、今こそライバルを減らす好機と見たのだろう。次々と争いに参加する。史上空前の大乱闘が始まった。
数十分後、全ての魑魅魍魎は同士討ちにより消滅した。まるで悪い冗談のような最期であった。
――以上が私の見た数十年前の話の全てです。
「貴方は『講堂の大乱闘』が最後の七不思議だと?」
私は自称『ブンヤ』の問いに少し眼を細め答える。
「さて、あれは確かに不可思議な出来事でございました。しかし未だに彼らがまことしやかに語られている、これ以上の不思議は私にはございません」
彼らは戻ってきたのか、それとも噂の独り歩きか。あるいは最初から存在しなかったのかもしれない。
いや、きっと今もどこかにいるのだろう。彼らは不思議ゆえに。
[2010年2月2日掲載]
講堂の壇上に立ったのはベートーヴェンの肖像画で、集まったのは人体模型に二宮金次郎像に十三段目の階段に……。情景を想像しただけで、にやにやしてしまいますね。学校の七不思議たちにこんな苦労があるとは。

佐々木 紀子さん 23歳(アルバイト)
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