詩 ―銅像とパレード―

Kasaku2_4松井 彩さん 19歳(武庫川女子大薬学部1年)

2月の書き出し
 
にぎやかなパレードが大通りをやってくる。沿道の人々は歓呼で迎えた。その意味も知らないままに。

 華やかな羽飾りを装う白馬の列。煌(きら)びやかな白銀の甲冑(かっちゅう)を身に纏(まと)った将軍たち。
 勝利の栄光とまばゆいばかりの誉れを胸に、街を往くのは凱旋(がいせん)のパレード。
 歓声を上げる人々は純粋にこの豪奢(ごうしゃ)な行列と自国の戦勝を喜んだ。
 その戦で多くの者が死んだことも知らず。

 いさましいパレードが大通りをやってくる。沿道の人々は万歳で迎えた。その意味も知らないままに。

 鈍く光る勲章と銃剣、肩章の列。規則的なリズムを刻む軍靴の音がひびきわたる。
 勝利の期待としばしのさみしい別れを胸に、街を往くのは出征のパレード。
 万歳とさけぶ人々は心からこの若い兵士たちの武運を祈り、見送った。
 彼らが二度と戻らないであろうことも知らず。

 招かれざるパレードが大通りをやってくる。沿道の人々は静かに迎えた。その意味も知らないままに。

 黒い戦車と見知らぬ異人たちの列。街中にたてられた毒々しい色の旗がひるがえる。
 勝利の欲望と通りを見下ろす快感を胸に、街を往くのは征服者のパレード。
 俯(うつむ)いたままの人々は闇に少しずつ融けていく己たちの明日を見つめていた。
 それが新しい時代を築くと気付く術はなく。

 そうして、街は数え切れないほどのパレードを迎え入れてきた。
 遠い遠い昔から変わらない石畳の大通りと、街の善良な市民たち。何一つ、変わらない。
 人々は、只訪れるままに全てを受け入れ、時代と共に感情を分かち合ってきた。そこに是も、非も無く。

 だが、それは紛れもなく彼らが作り出した物だった。
 人が街を紡ぎ、国を紡ぎ、時を紡ぎ、世界を紡いで、回る廻る歴史の糸車。
 この街の広場に立ち、カラカラと音をたてる輪廻(りんね)を見つめ続けた私も、その一屑(ひとくず)に過ぎぬ。

 また、丘の向こうからパレードがやってきた――。

'09年2月「にぎやかなパレードが…」
| コメント (0)

笑顔のピエロ

Kasaku2_4西澤 寛奈さん 17歳(京都女子高校2年)

2月の書き出し
 
にぎやかなパレードが大通りをやってくる。沿道の人々は歓呼で迎えた。その意味も知らないままに。
 
見たこともない人たちは、いろんな人に手を伸ばしパレードに加えてゆく。
 一人こっちに来た。にっこり笑って手を差し出す。
「みんなどこに行くの?」
 何も答えない。笑ったままの顔が不気味に見えてくる。
「みんなどこに行くの?」
 その人は手をさっと引っ込めてパレードに戻っていった。
 次の日、村の人は起きてきて仕事をしだした。
 黙々と作業をこなす。いつもおしゃべりをしている人達も話し出しても続かない。
「……そう。へぇ。ふぅん」
 笑い声が消えてしまった。
「みんな笑わなくなったね。どうしたの?」
「楽しいってどんなだっけ?」
 その日を境にみんな笑わなくなった。笑う事を知っているのはパレードに参加しなかった極わずかな人達だった。でも、気まずくって家でしか笑わなかった。
 一週間後、町の方から警察がやってきた。町の人達を調べてから、僕たちに言った。
「これは、例のピエロの仕業ですね。同じ様な事が数件起きてまして、その土地の笑顔を持っていってしまうのですよ。結晶化して高く売り飛ばすみたいです。やつらは絶対その土地の全員から奪ってからピエロの描かれたジョーカーを置いていきます。必ずまたここに現れるでしょう」
 警察たちは意気込んで早速ピエロに迎え撃つ準備を始めた。
 その晩どこからともなく音楽が聞こえてきて、またあのパレードがやってきた。警察たちはとろんとした目でパレードを見つめその中に加わっていった。
 物陰で不安に見ているとこの前やってきたピエロがニヤニヤと笑いながら歩いていた。
 そいつは、手にガラスのつぼを持ってパレードの人に触れては中の水で手を洗っていた。だんだん水はピンクになってきて、たまらず僕は飛び出した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 ぱっと起き上がると僕はいつもの部屋のベッドにいた。お祭りでもらった目覚まし時計がパレードの曲を流していた。
「なんだ、夢か」
 机を見ると射的で当てたピエロがニヤニヤとこちらを見て笑っていた。

'09年2月「にぎやかなパレードが…」
| コメント (0)

わるいゆめ

Kasaku2_4古川 健介さん 21歳(近畿大農学部3年)

2月の書き出し
 
にぎやかなパレードが大通りをやってくる。沿道の人々は歓呼で迎えた。その意味も知らないままに。
 
そもそも、誰がその意味を知っていただろうか。
 私は群衆の中で一行が過ぎ去るのを待っている。
 この光景を私は知っている。幼いときの記憶だ。
 つまり、私は夢を見ている。
 吐く息が白い。
 コートのポケットに突っ込んだ手はかじかんでいる。
 寒いうえに、居心地が悪い。
 今日が祭りの日だと失念していたせいで、通行止めを食らってしまった。気がついたときには、既に後にも先にも、人に取り囲まれて私たち家族は、身動きがとれなくなっていた。寒いというのに、人々はパレードで芸をするピエロに声援を送っていた。
「……!」
 そのピエロを見たとき突然、私に悪寒が走った。
 人に媚(こ)びへつらい、客を喜ばせる姿をみて恐怖に似た感情が湧き上がってきたのだ。
 相も変わらず、うるさい人々の喧噪(けんそう)に身を委ねながらじっと寒さに耐える。いまや、私は外気の寒さではなく、例えようのない内気の冷たさに耐えていた。
 ……あんなこと、私には出来ない。
 人に合わせて器用に生きる人。
 逆に不器用に自分を貫いて生きる人。
 ……私は、そのどちらでもない。
 自分というものが分からないし、人に合わせて生きる器量も持っていない。
 私は、ピエロに自分のアイデンティティを揺さぶられたのだ。
 パレードは遅々として進まない。
 ……何が不満かって、ピエロが私に向かって手を振っている。勿論(もちろん)、偶然私のほうに向かって手を振っているだけなのだが。
 虫酸(むしず)が走る。
 一刻も早く、ピエロが移動することを願う。
 私は耐えきれず、下を向いた。
 ……私の何を、知っている?
 私の人生を値踏みするんじゃない。
 すると、そんな私の声が届いたのか、ピエロは手を振りながら移動し始めた。
 ようやく、いなくなったピエロから解放され、私は一息つく。しかし、その瞬間、

「お前が知らないだけ、ダ」

 移動するピエロが笑いながら、私を指さしていた。
 私は、全身から血が抜けるような錯覚を受ける、
 例えるなら、悪夢が現実を蝕む感覚に似ている。
 目が覚める頃には全て終わって欲しいのだが、恐らく私がいる限り、この悪夢は終わるまい。

'09年2月「にぎやかなパレードが…」
| コメント (0)

百鬼夜行

入選作品塩谷 友望さん 18歳(関西大第一高校3年)

■2月の書き出し
 にぎやかなパレードが大通りをやってくる。沿道の人々は歓呼で迎えた。その意味も知らないままに。

 その時、僕はハトに餌をやっていた。だが騒ぎに驚いたのか、ハトたちは一斉に飛び立ってしまい、手持ちぶさたになった僕はパレードの方へ向かった。
 ひときわ歓声が大きく聞こえる。辺りを見ると、脇からパレードの中に飛び込んで行く人が結構いた。何のパレードなのかは分からないが、おもしろそうなのでついて行ってみることにした。しばらく同行した後、ふと門限を思い出し、列を離れ家路についた。
 しかし、曲がり角でまたあのパレードとぶつかった。引き返して別の道を辿るが、行く手には必ずあの熱狂的な集団が現れる。何度か試みた後、どうやっても抜け出せないらしいと気がついた。自分は何やらおかしなものに巻き込まれてしまったようだ。呆けていると、後ろから肩を叩かれた。振り返ると見知らぬ男が、特徴あるつり目を細めて怪しく笑っている。
 「ばかだなあ、なんでこんなところに来たんだよ」
 誰だ誰だと警戒していると、向こうから口を開いてきた。それもやたらとなれなれしい。
 「来ちゃ駄目だったのかよ」
 別にすごく来たかったわけではないが、むっとしたので言い返す。つり目の男は面倒そうな顔になった。
 「当り前だろう。こういうのは見て見ぬふりをしなくちゃいけない。お前、これは妖怪のパレードだよ」
 言われて、ぎょっとしてあたりを見回す。僕は大きく息を飲んだ。なぜ気付かなかったのだろうか。仮装だと思っていた者は皆、恐ろしい風貌をした異形の者たちだった。つり目男はやれやれといった表情を浮かべる。そして、真剣な口調で僕に言い聞かせた。
 「一度参加したら終わるまでは引き返せないし、人間だと気付かれたら食われちまう。いいか、俺が合図したら、あの木とあの木の間を走り抜けるんだ」
 その時だった。角を生やした大男が、鼻をひくひくさせて叫んだ。
 「人間のにおいがするぞ!」
 「今だ、行け!」
 僕は必死で走った。が、すぐに追いつかれそうになってしまう。懐にハトの豆があることを思い出し、追いかけてくる奴らに夢中でぶつけた。連中がひるんだすきに、僕は二本の木の間を一気に駆け抜けた――。
 振り返って見ると、そこに木は一本しか生えていなかった。そして、あれほどにぎやかだったパレードはどこにもなく、辺りはしんと静まり返っていた。僕はぞっとして、家までの道を全力で駆けた。
 家の前まで来て、ようやく一息つけた。呼吸を整えていると、ふかふかしたものが足にすり寄ってくる。いつも僕が餌をやって、かわいがっている猫だ。しゃがみ込んで目線を合わせた時、あっと思った。嬉しそうに細められるのは、見覚えのあるつり目だった。

[2009年2月23日掲載]

Alicekara_1 パレードと横文字で書いてあっても、すかさず百鬼夜行に変換してしまう。センスがいいと言うより、これはもう小説家的反射神経でしょう。塩谷さんは、これで三カ月連続の入選ですね。もはや貫禄すら感じさせます。

'09年2月「にぎやかなパレードが…」
| コメント (0)

長い長い・・・・・・

入選作品渡辺 翔大さん 18歳 (関西学院大理工学部1年)

■2月の書き出し
 にぎやかなパレードが大通りをやってくる。沿道の人々は歓呼で迎えた。その意味も知らないままに。

 楽しげな音楽が街中に響き渡る。前触れもなくやってきたパレードに、街の人々は色めきたち、首を長くしてそのパレードを待った。
 すると先頭に、背広に蝶ネクタイの太っちょ紳士が、たった一人で小さな自転車に乗ってやってきた。彼は忙しなくペダルを漕ぎながら、野太い声を張り上げた。
「みなさん! どうか楽しんで! このパレードは自由参加! もし皆さんが気に入ったパフォーマンスがあれば、是非参加してください! どうか楽しんで!」
 その紳士が去って幾許もしないうちに、まず愛らしい目をした大きな象たちが、背中に豪奢な御輿を乗せてのっしのっしと地面を踏みならしながらやってきた。御輿には象使いが乗っていて、音楽に合わせて象が嘶きながら鼻を持ち上げると、人々からはおおっと歓声が上がった。
「すごい! こんな大きな生き物見たことがないよ!」
 そう言って何人かの子供は象の背中に乗せてもらい、そのままパレードに参加した。次いで立派な軍服を着た軍人の隊列が、太鼓の音と共に軍靴を響かせながらやってきた。一糸乱れぬ動作で大股に歩を進める軍人達は、時折立ち止まっては腰のサーベルを抜き払い、空に向かってそれを突き上げると、サーベルは日の光を浴びてビカビカと光り輝いた。とある農夫が彼らを誉めたたえて呟いた。
「実に勇ましい。昔は軍人になりたかったものだが」
 すると、彼らを先導していた軍人の一人が、やってきて、軍服を彼に手渡すと「それを着てこっちへ来たまえ、君も参加するんだ」と高飛車に言った。
 農夫は照れながらも喜び、急いで軍服を着てパレードに飛び込んでいった。同様に何人かも参加した。
 打って変って華やかな衣装を身にまとった艶やかな踊り子が、異国の舞を軽やかに踊りながら、腰布をなびかせやってきた。人々はその美しさにうっとりと感嘆しつつ、思わず溜息をついた。
「あの踊り子達ったら、妖精みたい!」
 そう言ってパン屋の娘は彼女らの後ろについて踊り出し、パレードに参加した。その後ろにはおどけた仕草をしたピエロ、その後ろには愛らしい動物達、その後ろには最新型の戦車、その次には曲芸団……後ろを見ても終わりが見えない。
 とてつもなく長いパレードだった。それでも人々は退屈することなく、いくつもの素晴らしいパフォーマンスに魅了され、街の人々は仕事も忘れて見入り、人々は少しずつパフォーマンスに参加していった。
 日が暮れる頃、長い長いパレードはその街を去った。
 そのころにはもう、街には誰もいなくなってしまっていて、パレードはより長く、にぎやかになって、次の街を目指すのだった。

[2009年2月16日掲載]

Alicekara_1 不吉な行進という意味では先週の「死のパレード」と似たモチーフではありますが、華やかさと騒々しいばかりのにぎわいが描かれているため、テイストはかなり違います。その陽気さが不気味な結末につながっていく……。

'09年2月「にぎやかなパレードが…」
| コメント (0)

死のパレード

入選作品山田那名江さん 23歳 (関西大社会学部4年)

■2月の書き出し
 にぎやかなパレードが大通りをやってくる。沿道の人々は歓呼で迎えた。その意味も知らないままに。

 パレードがこの町にやってくることは人から人へと噂(うわさ)として広がっていった。そして今日、町の人はみんな大通りの沿道に集まっていた。人々の後ろに控える町は真昼にもかかわらずひっそりとしている。
 華やかな楽器の音が大きくなってきた。パレードが大通りを下ってきているのだ。
 大勢の人の中で僕は一人、緊張していた。腋(わき)にも手にもじっとりと汗をかいている。なぜ僕一人だけが、こんなにも、緊張しているのか。
 人々の肩越しに通りのほうを見やる。しかし、人垣でほとんど見えなかった。これでいいんだ。僕は後ろのほうでパレードを迎え、見送ろう。
 わっとまわりで歓声があがった。パレードはかなり近くまで来ているらしい。ぎゅっと目を閉じる。
 タンタカタン タカタカタカタカ タンタカタン
 後ろから、横から、歓声をあげる人々に押される。無意識に足を踏み出していた。
 何故(なぜ)だ。
 タンタカタン
 僕だけが、
 タンタカタン
 こんなにも
 タンタカタン
 恐れているのは。
 タンッ。
 ふっと目の前が明るくなった。目を開けると色鮮やかなパレードが左から右へと行進している。いつのまに最前列に来てしまったのか。戻ろうにも人垣に押されて戻れない。
 その時、華やかに流れていた音楽が不意に転調した。哀愁ただようメロディー。ピエロが踊りながら行進していく。
 ふいに僕はそのひとりと目が合った。目の周りを黒で縁取ったピエロ。その下に血の涙のような赤い模様が描かれている。口には耳まで裂けているような赤いペインティング。笑っているように見えるピエロの目には、深い闇。赤く充血した目を僕から離さない。口からのぞく歯は、異様に白い。
 ピエロが腕を伸ばし、僕の腕を掴(つか)んだ。ぎりぎりと爪が腕に食い込む。固まっていた僕は抵抗も出来ず、あっという間にパレードに引きずり込まれた。助けを求めて突き出した手も虚(むな)しく宙をつかむ。
 タンタカタン タンタカタン タカタカタカタカ タンタカタン
 そうか。
 このパレードのピエロはみんな引きずりこまれたんだ。作られた笑いを顔にはりつけて、死ぬまで踊り続け、死ぬまで終わらない、このパレードに。

[2009年2月9日掲載]

Alicekara_1 死の輪舞。ハーメルンの笛吹き。そんな伝承を思い出させる一編です。華やかなパレードの不吉さを、あらかじめ語り手が何となく察知しているのがよけい恐ろしい。決して陰鬱なだけではない、まさに不思議の物語です。

'09年2月「にぎやかなパレードが…」
| コメント (0)

竜頭蛇尾

入選作品二村祥平さん 23歳 (神戸薬科大4年)

■2月の書き出し
 にぎやかなパレードが大通りをやってくる。沿道の人々は歓呼で迎えた。その意味も知らないままに。

 僕を含め大半が、この時点では真実に気づく由もない。
 世界最大級のパレードがこの場所で定期的に開催されると、噂には聞いたことがある。しかし、毎回どういったタイミングで行われるのかは明示されておらず、今日、たまたまここに居合わせて見物できる僕は、通に言わせれば相当運がいいらしい(隣にいたオッサンが教えてくれた)。しかし残念ながら、もともと特に興味があったわけでもなく、今一つ感動は薄かった。
 だが実際にパレードが始まると、その光景はあっという間に僕の目を奪う。この世のものとは思えないほど豪勢な衣裳を身に纏った人が、一人ずつ、自信に満ちた表情で前進していく。まさに威風堂々。あまりのことに、ただただ圧倒されるしかなかった。さらにその後ろから数人のグループが、これまた綺麗な格好で目の前を通り過ぎていく。色とりどりで非常に華やかだ。なるほど、これだけの規模なら、見ることができて運がいいというのも、あながち間違いではない。

 それから少し時間が経った。パレードは変わらず賑わっていたが、僕は小さな違和感をおぼえる。
 服装のレベルが、徐々に落ちてきていないか?
 もちろん、高価なものには違いないだろう。しかし、最初の頃に比べると明らかに質が悪い。素人の僕でも分かるほどだ。目が慣れた、では説明がつかない。

 僕の感覚は間違っていなかった。それから数時間後には、見慣れた普段着を着た人たちが巨大な集団となって押し寄せた。少人数で歩いていた前半とは異なり、パレードは大きなうねりとなっている。沿道を埋めた観衆も、ここが潮時とばかりに帰りはじめた。

 その時、ふと、信じられないものが目に入った。
 僕が、パレードに混ざっていたのだ。
 寒気がした。鳥肌がたち、体が硬直する。姿はもう群衆に紛れて見失ったが、あれは確かに僕だった。見間違えるはずがない。
「自分の姿を、見つけた?」
 隣のオッサンが話しかけてくる。
「じゃあ今、君はこの階層にいるんだね」

 それからの数時間は、もう見ていられなかった。ほとんど衣服を身につけていない団体が来たところで、僕はその場を離れようとする。
「まだまだ続くよ。ここからが長いんだ」
 オッサンが口を開いたが、無視する。
「昔は、ここまで縦長じゃなかったんだけどねえ」
 最後に、パレードの前方を振り返る。当然ながら、この場所から先頭など見えるはずもなかった。

[2009年2月2日掲載]

Alicekara_1 パレードの意味を考えた末、作者は格差社会というテーマに至ったのですね。ほろ苦さの中にリアリティを感じました。その発想に脱帽します。1行アキを多用していますが、効果的とは思えません。もったいない。

'09年2月「にぎやかなパレードが…」
| コメント (0)