幻想する死
高山 貴帆さん 14歳(立命館中学校3年)
■4月の書き出し
「自分でも、おかしなことだと思います。でも、毎晩それをしてからではないと眠れないんです」
今、私の目の前にいる女がそう言った。
私がこの女と出会ったのは昨日。私はとある所の精神回復などを行う医院で働いていた。そこにこの女が来たのだ。闇が光を侵食しだした夕暮れ時にこの女は駆け込んできた。
「私変なのでしょうか!?」
医院の前にある花壇に水遣りをしていた私に摑(つか)み掛って物凄(ものすご)い形相でそう叫ぶ。私は驚き彼女を突き飛ばしてしまった。その時頭を運悪く花壇の縁にぶつけてしまった。私は頭から流れる大量の血を考えたが、不幸中の幸いか、考えとは違い軽傷だった。そして次の日、この女が目を覚ましたと連絡が来た。私は、女が入院している病院に駆けつけた。がらりと大きな音を立て、息を切らして中に入った。
「自分でも、おかしなことだと思います。でも、毎晩それをしてからではないと眠れないんです」
私は余りの唐突さに、思考がとまった。そして暫(しばら)くの間があった。私は何を思ったのだろう。きっとこの空気が気まずかったのだ。女に聞いてしまった。
「何をしないと眠れないのですか?」
「死を幻想しないと眠れないんです」
死を幻想? 何のことか分からない。死を幻想するとは一体どういうことなのか。さらに混乱した。
「死を幻想する?」
私は思わず口に出してしまった。すると女はそれに答えるかのように語りだした。
「何か生き物を殺す幻想をするんです。最初は小さな虫でした。毎晩。で、飽きたらもう少し大きい物の死を今度は幻想するんです。でも幻想にも限度があった。猿までを幻想で殺した後です。猿の後は何か分かりますか?」
女は聞いてきた。私は「人間?」と小さく答えた。「そうです。これも幻想で殺そうとしました。しかし、猿までは幻想出来たものの、人間となると幻想できなかった。でもこの行動を自分は止められなかった。ですから、誰かにとめてもらおうと病院に行ったんです。そこで私は人を殺(あや)めかけました」
私の脳裏に何か浮かんだ。頭がジーンと痺(しび)れてきた。「突然衝動に駆られ、目の前の人に摑み掛かり、突き倒したのです。その人は運悪く花壇の縁に頭をぶつけ、頭から血がとめどなく流れ出ました」
意識が闇に落ち始めた。私は必死に抵抗した。
「その人は今も昏睡(こんすい)状態です」
ここまで聞いて、私の脳裏にまた浮かんだ。今度は、はっきりと、血を流して倒れている人が。女は私を見てすまなそうな顔をして言った。
「本当にあなたには悪いことをしたと思っていま……」
ここで、全て闇に消え、そして私は――目を覚ました――



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