選考を終えて(10月)
今月の書き出しは、われながら面白いと思っていたのです。だから期待も大きかったのですが、それに見合った作品がたくさん届きました。いつになく傑作が集まったというよりも、全体のレベルが高かったため、選考には苦労しました。もちろん、うれしい苦労です。入選作・佳作をお読みいただければ、それぞれの作品がまるで違ったテーマを持ち、まるで別の効果を狙っていることがお判りいただけることでしょう。
「毒をはらんだもの」は、社会性のあるテーマを扱っています。そのものが何であるか、はっきり明示していないところがミソ。多くの読者はアレを想像しそうですが、それが正しいかどうかは判りません。私たちがまだ知らぬ何かであるかもしれないのです。
「離郷」のように、語り手が実は……というオチの小説はたくさん寄せられます。書きやすいからでしょう。どうせなら、これぐらいきれいにまとめて欲しい。「尻尾」の一語でタネを明かす手際がうまいだけでなく、小説としての感興に富みます。
「飴細工の窓ガラス」は、さわやかで少し切ない青春小説。書き出しの「大きなシート」と内容にズレがあるような気もしますが、解釈の仕方によってはセーフかな。セリフも文章も滑らかです。飴細工の窓がまもなく溶けてしまうのが惜しまれますね。
ということで、来月も期待しています。



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