橋本 仁美さん 20歳 (関西大政策創造学部1年)
■2月の書き出し
友人は、表情を曇らせてその写真を差し出した。おかしなものが写っている、というのだ。ばからしい、そう思いながらも僕は写真を覗(のぞ)きこんだ。
見ると、僕と友人が枝を集めながらピースサインをしている写真だった。どうやらこないだ、みんなでキャンプに行ったときの写真らしい。
おかしなところは一見なさそうだったが、友人の「ここ」と指す先を見て、僕は息をのんだ。僕らの背後にある雑木林の暗がりに、何か生き物が立っているのがはっきりと写っているのだ。
「これさ、なんだと思う?」
友人がため息をつきながら僕にたずねたが、僕もこんな生き物は見たことがない。
手が二本、左右に胸の横っちょあたりから生えている。歩みは、明らかに二足歩行である。しかし熊のように毛むくじゃらではなく、つるつるとした体をしている。顔とおぼしき 場所には黒々とした目が二つあって、その上にはぼさぼさとした毛が生えている――。
僕らはそのまま図書館に行って、図鑑を片っ端から借りた。そして二人で手分けして、古代の魚から空想上の妖怪まで、ありとあらゆる分野の生き物を調べていった。
僕が五冊目の図鑑に手を伸ばした時、友人が「あ」と小さく悲鳴を上げた。
「どうした?」
そう言って僕が覗き込むと、その中には、恐ろしくその写真とよく似た生き物が描かれていたのだ。僕は手が震えた。友人は、今にも泣き出しそうな顔で僕を見ていた。
「まだそうと決まったわけじゃない。生物の先生に見てもらえば、きっとわかるんじゃないかな?」
僕はそう友人に提案し、二人で生物の先生の研究室に行った。僕らは先生に会うと、丁寧に、その写真のこと、そして図鑑で見た生き物のことを先生に説明した。
すると先生はその写真をじっくりと眺めた後、一言おっしゃられた。
「君たち、これは歴史が変わることになるかもしれない。大発見だよ」
初めは怯(おび)えていた僕らだったが、先生の一言に急に誇らしい気持ちで胸がいっぱいになった。その生き物は怖いが、そんなのを発見した僕らってすごいじゃないか。
翌週、僕らの写真の拡大図と大きな見出しが新聞の一面を飾った。
「抹殺したはずの人類、生き残りか」
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