彗星(ほうきぼし)追跡
福田 夏美さん 20歳
(佛教大文学部2年)
■8月の書き出し
自由研究の課題として、それはまったくもって型破りだった。「みんなびっくりするだろうな」
流れ星を見た瞬間、家を飛び出して走っていた。あの先に何があるだろう。そんなことを考えた。
ぐんぐん星が落ちていく。ぐんぐんぐんぐん。それに合わせるように走ってはしった。森の影で見失いそうになる。倒れた木をぴょいと飛び越える。青い光がきらりきらりとしている。空にはまだあんなにもたくさんの星があるんだ、と思うとなんだか目眩(めまい)がした。綺麗(きれい)だと思った。
星と競争するように走っていると、いきなり森が開けて大きな湖が現れた。水面は静かに黙っている。星の行方を見た。青い光はこっちへ向かっている。ずんずん近付いて、あ、と思ったら湖の中に飛び込んだ。水が動いて光が射(さ)して、湖がぼうっと光る。恐る恐る覗(のぞ)き込むと、青色が下に沈んで行くのが見えた。けれど見えたのはそれだけではなくて、沈んでいる光と石のようなもの。赤、青、緑、黄、白。水中の中で色彩が光っていた。はた、と気付く。「ここは星の落ちる場所なんだ」さっき落ちた青い星は、光らない石みたいな星にごちんとあたって止まった。流れ星の到着地点はここだった。
「だけどどうして、光ってるのとそうじゃないのがあるんだろう」
湖から視線を上げて空を見る。星の瞬(またた)きが光る。と、今度は白い星が落ちてきていた。じっとその星を見つめた。落ちる場所は、きっとここだ。白い星が落ちて落ちておちていく。光る線のように。
すると、星が一際大きく光って、次にはぼんやりとした明かりにしか見えなくなった。ほとんど色を失っている。あれ、と思いながらも必死で星を見る。星はおなじようにぼちゃんと湖の中に落ちた。けれども光っていないので見えなかった。下に沈んでいるような気がするだけで。首を傾(かし)げてしまった。解(わか)らなかった。考えて考えて、ひとつ思いついた。
「もしかしたら、願いを聞いた星は光らなくなるのかもしれない」
さっき消えてしまったのは、誰かが願いを言ったから、じゃないか。確かめることはできないけれど、へんな自信がわいてきた。
「次は、そのことをちゃんと証明しなくちゃ」
静かにじっとしている、星の宿る湖を、もう一度覗き込んだ。
[2006年8月28日掲載]
書き出しと作品をブリッジする文章が欲しかった……というのも野暮。とてもきれいなメルヘンです。「~ちゃんと証明しなくちゃ」が、キラキラした物語の中で、気持ちよくひっかかります。

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