望
森井 公美さん 22歳
(大阪女子大人文社会学部3年)
■12月の書き出し
歳末の街角でサンタクロースに差し出された紙切れ。バーゲンのチラシかと思ったら、そうではなかった。
「Present For You!」
赤い紙切れに緑の字でそう書かれているのを見て、僕はガンと頭を鈍器で殴られたような、殺意に満ちた衝撃を覚えた。なんてこった! 本物のサンタクロースだったのか! 慌てて振り返ったが、サンタはもう影も形もなくなっていた。僕は絶望で叫びだしそうなのをこらえ、空を翔(かけ)るトナカイの如く家に走りかえった。
僕は一月四日生まれ。後十一日で二十歳だ。だから油断していた。子どもにしかプレゼントを贈らないサンタが、こんなギリギリの子どもをターゲットにするなんて!
自分の部屋に入った途端に携帯電話が鳴った。友人からだ。
『お前、今年のターゲットになったんだってな』
笑いを含んだその言葉に僕はぞっとした。まさかと思い、テレビをつけると、僕の家の周りに群がるマスコミ群が映し出された。テロップで『今年のターゲットは史上最年長!』と出されている。毎年クリスマスは必ず見る浮かれたニュースなのに、まさか自分が報道される年が来るなんて……。
その日のディナーは、両親がご馳走を作ってくれたが、僕は金平糖一粒だって喉を通らない気分だった。
夜になり、サンタクロースが僕の元にプレゼントを届けに来た。記者やカメラマンが取り囲む中で、僕は引きつった笑いを浮かべて彼と握手をした。
「メリークリスマス!」
と、サンタクロースは言う。
一体彼はどこから人の望むものを知りえるのだろうか。どうやって子どもが一番欲しいものを調べるのだろうか。
心を読むのか?
自分の考えにぞっとした。まさか……。まさかそんな……。
「さあ! 開けてみてください!」
やたらテンションの高い女子アナが僕に言った。
僕は、震える手でゆっくりと包装紙を開き始めた。数秒後に自分の望んでいることが全世界に報道されるのだ。そう考えると、僕は意識を失いそうになった。
[2006年12月25日掲載]
クリスマスの夕べに、今年の最後を飾る作品を。アイディアの奇抜さ、サスペンスフルな展開、スピード感、ラストの余韻。どれも申し分がありません。大げさな表現の連発が笑えます。これはもう傑作でしょう。

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